《記継ぎ》(しるしつぎ)は、割れた陶磁器を漆で修繕することで、記憶を未来へと紡ぎ出すプロジェクト。陶磁器は物質的に割れる性質を持っているが、日本では古代より漆を用いて割れた陶磁器が修繕されてきた。我が国でこのような事例は既に縄文時代には見られ、金継ぎの起源と捉えることができる。このような漆によって陶磁器を修繕する行為について一般的には、物質的な修繕を目的としている。いっぽう日本では陶磁器が生活に密接しているため、その所有者の記憶と深い繋がりをもつ。《記継ぎ》では、このような陶磁器を漆で修繕する行為について、途切れた記憶を引き継ぐ精神的な行為と捉え、割れた陶磁器の記憶に焦点を当てたプロジェクトを2020年から展開している。
2022年度は、「アジア代表日本2022」で行われたワークショップ「WORLD PEOPLE CUP」と連携し展開した。このワークショップは、天草の磁器土と参加者に縁のある場所の土を素材に、w杯カタール大会アジア予選に出場した国々をイメージした「CUP(器)=想いが宿るもの」を形にして、野焼きを行った。野焼きのプロセスでいくつかの作品は割れてしまったが、割れた小さな破片も制作者の「想いが宿るもの」としそれらの破片を漆で繋ぎ合わせ世界に1つしかない優勝杯を制作するワークショップを行った。ワークショップは、天草地域(熊本県)と上野(東京都)で開催した。
助成:東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト
協力:アジア代表日本実行委員会
野焼きで割れた作品の破片
泥漿鋳込みで制作した優勝杯
ワークショップ日程/開催場所
「天草大陶磁器展2022」
日程:2022年11月5日(土)、6日(日)
場所:天草大陶磁器展(天草市民センター特設会場/熊本県)
参加者:天草大陶磁器展2022 来場者
「天草大陶磁器展2022」でのワークショップの様子
「天草大陶磁器展2022」のワークショップで制作された優勝杯
「藝大ワークショップ」
日程:2023年1月14日(土)
場所:東京藝術大学 アーツアンドサイエンスラボ
参加者:DOOR6期生、あまり粘土クラブ(DOOR4期生)
「藝大ワークショップ」の様子
「藝大ワークショップ」で制作された優勝杯